クリスマスプレゼント
    クリスマスプレゼント
一九〇五年のアメリカ、ニューヨーク。
  まちには、背が高いビルがたくさんあります。きれいな店もたくさんあります。大きいアパートには、お金持ちや有名な人たちがたくさん住んでいます。でも、こんなニューヨークにも,お金持ちじゃない人たちもたくさん住んでいます。そんな人たちは、どんなところに住んで、どんなところではたらいているのでしょう。
  これは、お金のあまりない夫婦ふうふ、ジム、とデラの話です。若い二人はふるいアパートに住んでいます。部屋は、ふたつだけです。部屋には、絵も写真もありません。テーブルの上にも何もありません。一週間は八ドルのやすいアパートです。ジムは、一週間に六日間むいかかん、朝から晩まで働いて、二十ドルもらいます。毎日とても疲れます。ですから、家までゆっくり歩いて帰ります。アパートについて、家のドアを開けると、そこには、いつも奥さんのデラが待っています。
ジムの大好きなデラが……
ジムが帰ってくると、デラは、テーブルにあたたかいスープとパンをきます。そして、きれいなちゃいろの目でジムを見ます。ジムもデラを見て、にっこり笑います。デラも笑います。二人でいると、お金がないことも、疲れていることも、わすれます。
  十二月の寒いのことです。ジムは、朝、仕事しごとに行きました。デラは、家で掃除そうじ洗濯せんたくです。それが終わると、デラは、財布さいふってきて、テーブルの上にお金をしました。全部出しましだ。
いちドルどる八十七セント。これだけ......。
これでは、ジムにクリスマスプレゼントを買うことができないわ。どうしましょう―
  クリスマスは明日あしたです。デラはこまりました。
デラはかがみを見ました。鏡の中には、デラのかなしい顔がありました。そして、とてもきれいなちゃいろの長い髪が……
ジムは、いつも言っていました。
「僕は、デラの髪が大好きだ。本当にきれいだ」
ジムとデラには、大切なものが二つありました。
一つは、このデラの髪です。
  そして、もう一つは、ジムのきん時計とけいでした。金の時計は、ジムがお父さんからもらったものです。とてもきれいな時計です。
  ジムは、いつでもどこへでも、この金の時計を持っていきました。
デラは、鏡の中の自分じぶんの髪を長い時間見ていました。それから、いそいでコートをて、帽子ぼうしをかぶって、クルマレテ外そとへ出て行きました。
デラは、「一番街いちばんがい」まではしって行きました。
  そこには、きれいな店がたくさんあって、みんなクリスマスの買い物をしています。
  デラは、ある店の前で止まりました。
髪を買います
デラは、その店に入って行きました。
デラは帽子ぼうしをとって、店のおばあさんに聞きました。
「私、かみりたいんですが……
おばあさんは、デラのきれいな髪を見て、言いました。
「そうだね......。二十ドルだね」
デラは言いました。
「じゃあ、きってください」
デラは、ゆっくり椅子いすすわりました。
デラは、二十ドルをもらって、帽子をかぶって店を出ました。
午後三時でした。
デラは、いろいろな店を見てあるきました。
―ジムにどんなプレゼントを買いましょう―
それから、二時間……
デラは、ある店の前で止まりました。
店の前のショーウインドーに時計のくさりがありました。
「これがいいわ!」
それは金のくさりでした。デラは思いました。」
―これをジムの金の時計につけると、とてもいいわ―
二十一ドルでした。
デラは、すぐにその鎖を買って、いそいで家に帰りました。
デラは家にくと、クリスマスの料理を作りました。
「できた。これでいいわ」
  デラは鏡を見ました。鏡の中には、とてもみじかい髪のデラがいました。
―ジムは、この髪を見て何と言うでしょう―
ジムの大好きな髪を切ったのです。デラは心配しんぱいになりました。
午後七時です。
  足音あしおとが聞こえました。ジムです。ジムが帰ってきました。ドアが開いて、古いコートを着たジムがはいってきました。ジムはデラの髪を見ました。でも、何も言いません。
デラは言いました。
「ジム、ごめんなさい!私、あなたが好きだった髪をったの。私、あなたにどうしてもクリスマスプレゼントを買いたかったの。でも、大丈夫。髪は、すぐ長くなるわ」
ジムは静かに言いました。
「髪がみじかくても長くても、僕は、デラが好きだよ。さあ、これは、僕からのプレゼントだよ」
デラは、ジムからのプレゼントを開けました。
デラは大きな声を出しました。
「あ、あのくしだわ!あの店のくしだわ!これ、前からしかったの。ああ,うれしい!本当にきれい。あ、でも、もう私の髪は……
  プレゼントは、長い髪につけるくしでした。デラ前から欲しかったものです。
  デラは、毎日、「五番街ごばんがい」の店にあったこのくしを見ていたのです。
  デラはかなしくなりました。
でも、すぐに元気を出して言いました。
「髪は、また長くなるわ!それまで少し待ちましょう。ジム、私のプレゼントも開けて!」
デラは、ジムにプレゼントをわたしました。ジムは、プレゼントを開けました。
きんくさりです。
「ね、きれいでしょう?あなたの時計につけて!とってもいいと思うわ」
と、デラが言いました。
ジムは、すぐには答えませんでした。
それから、静かに言いました。
「デラ。もう、あの金の時計はないんだ......。僕、あの金の時計を売って、そのお金でくしを買ったんだよ」
  テーブルの上には、温かいクリスマスの料理と、くしと、金のくさりがありました。
  今年ことしの二人のクリスマスは、とてもいいクリスマスになるでしょう。二人の大切たいせつな長い髪も、金の時計も、もうありませんが、二人には、もっと大切なものがあるからです。 
制作:崔燕

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